特集:b-flower『純真』レビュー


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「純真」 何て穏やかな楽曲なんだろう。
様々な経験を積んだつまらない大人は、悟りをひらいてしまったのだろうか?
 
アコーステッィクギターのアルペジオに優しく寄り添うストリングスとピアノ、楽器の音に溶け込む声。今までの作品以上に音の一部として楽曲に馴染むように歌っている印象を受ける。
 
「純真」を聴いていると、なぜだかモノクロのスライドの映写会のように、1枚1枚パタパタ、カチカチと、子供の頃から今までの場面場面が代わる代わる浮かび上がってくる。

それは特別に印象に残っている場面ではなく、ただただ日常を切り取っただけの場面が浮かんでくる。
 
なぜだろう?
 
歌詞は真っ直ぐなラブソングなのに、僕には、日常を穏やかに歩む人生、もっと言えば平和な世の中で穏やかに過ごす人生、なんて風に聞こえてきてしまう。そして繰り返し聴いているとモノクロの映像に色を付けたくなってしまう、淡い黄色や緑。しかし、もっともっと繰り返し聴いていると、色彩は必要ないんじゃないかと。色のない世界が本質ではないのかと今は感じています。
 
「純真」は、そんな勝手な想像を膨らませてくれる“素敵”な作品です。“素敵”とは自分だけの小さな宝物とでも言えばよいのでしょうか。でも自分だけではもったいないので、皆にひそひそ話で教えます。それが巡り巡って世界中に広がることを祈ります。
 
1992年の『ペニーアーケードの年』から今まで、沢山の素敵な作品を届けてくれたb-flowerですが、復活したb-flowerは更に素敵度に磨きがかかっているようです。

ライブをはじめ、精力的に動き出したb-flowerから今後も目が離せません。
 


ザ・ランドリーズ 木村 孝之


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