特集:b-flower『純真』レビュー


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b-flower You are the One for me を聴いて



針を乗せると少しの間をおいて流れてくる、ゆるやかで優しい弦楽器。そして歌が始まりました。

 「ずっと君だけを 想い続けていたいんだ
  無防備な素顔の 君が好きなんだ」

 


b-flowerの新譜 You are the One for me から、A面の純真を聴いています。京都発ニュージーランド経由で東京に届いたこの曲、とても楽しみにしていたのですが、聴いて最初に思ったのは「えっ…」でした。がっかりした、とか、つまらなかった、とかではありません。こんなストレートで甘いラブソングが来るとは思わなかったからです。

 


これまでにもb-flowerの作品には数多くのラブソングがありましたが、どことなく捻れたものが多かったように思います。たとえば… 自分の彼女をつかまえて、君あまり可愛くないからさ、僕たち付き合ってるの内緒にしようよ…という曲であったり、見方や感じ方がまるで違う二人だからこそ、上手くやっていけそうだよね…という曲に『何だかまだよく判らない』なんてタイトルをつけたり、また別の曲では「誰かのため生きてゆくんだよって 一度くらい言ってみたいよな」なんて歌っていた人が、こんなに直球のラブソングを書くとは思わなかったのです。


 「時を遣い切るまで 僕のこのすべてを捧ぐよ」

一度くらい言ってみたかった言葉、ようやく言えたんだねって。

はかなく壊れていくだけのキラキラとした永遠の恋は、強くて消えない愛に辿り着いたのです。

 

街で流れてくる多くのラブソングのように、激しいドラマも切ない片思いも、このb-flowerの新曲純真には一切ありません。でも、純真というものが世の中にあるとしたら、きっとこういうものなんじゃないかと思うのです。そして、このレコードに針を乗せる夜更けにはいつも、壁の向こうから感じる気配に、「僕もこの曲のように居たい」と思うのです。

 


この曲純真は、配信でも購入することができますが、レコードにしか収録されていないB面曲も素晴らしいです。1993年リリースのメジャーデビュー盤に収録されていた曲の新録音版ですが、22年を経て曲の瑞々しさを失うどころか、更に磨きがかかっているように思えますし、純真と交互に聴くことで、相互にメッセージを高めあっているようにも思えます。

僕がb-flowerと出逢ったのが、このメジャーデビュー盤なのですが… 22年と書けば3文字ですが、凄い年月ですよね… それなのに少しも古びていない音楽。


b-flowerの新譜 You are the One for me

ここに来てこんな1枚がでてくるなんて、もしかしたらb-flowerって、これからが本番なのかも知れません。もちろん、今までの楽曲全てが素晴らしいのですが。

これは僕がそうしたように、このためにレコードプレイヤーを買ってでも聴く価値のある、そんな大切な1枚だと思います。

 


油淋鶏

会社員


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