特集:b-flower『純真』レビュー


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「純真」

 


「愛についての」ではなく「愛そのもの」のような音楽 ――

b-flowerの新曲“純真”を聞いて最初に思ったことは、それだった。


この曲にあるのは「愛の描写」でも「愛の説明」でもなく「愛の感触」だと思った。

その「感触」が比喩ではなく実体として曲から伝わってくるという点において、これはリアリストの奏でる音楽だと思った。ちょうど、曲の中で静かにけれど力強く歌われる<YOU ARE THE ONE FOR ME>というフレーズにある二人称的関係が、絵空事ではない、実感を伴った現実の愛の影を浮かび上がらせているように。


歌詞もメロディーもアレンジもすべてが繊細で美しい。その美しさは、「愛の感触」が何ひとつ損なわれることのないようにという祈りのようであり、そこには愛というものの脆さとうつろいやすさに対する深い洞察と静かな抵抗がある。

<たぶんそれは小鳥のように守るものではなく/はかなく壊れていくだけで/キラキラとしてて/そうちょっと恥ずかしくて/嘘みたいにキレイな色をしてる>(永遠の59秒)というかつての予感と推測は、時を経て、この曲の中で<愛は強くて消えないものだよ身も心も残さず僕のこのすべて捧ぐよ>という断定と決意に結晶したのかもしれない。

「美しい音楽」とは、こういう音楽のことを言うのだと思う。


ay8b (朝焼けエイトビート)


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